誰もが表には見せない感情や衝動を抱えながら存在している。
本展は、ポートレイトにおいて本来その存在の中心となる目を、
無機質な金属的素材によって覆い隠すことで、
人間の内側に潜む揺らぎや不可視の感情を浮かび上がらせる試みである。
鏡面のように光を反射する表面は、鑑賞者や周囲の空間を取り込みながら、
固定された肖像の在り方を解体していく。
そこに現れるのは明確な人物像ではなく、断片化された記憶や気配であり、
見えているものと隠されているものの間にある曖昧な領域である。
顔を覆う金属の表面は、感情を閉じ込める防壁であると同時に、
内側で静かに膨張する欲望や衝動を映し返す鏡でもある。
表面上は冷静で無機質に見える存在の奥で、人間的な熱や葛藤は絶えず揺れ動いている。
シリーズを通して描かれる「鼻血」は、身体の内側にあるものが突然外部へ滲み出す痕跡として扱っている。
抑え込まれた感情や生命の熱が、静かな表面を破って現れる瞬間を象徴している。
無機質な反射面と、生々しい身体の痕跡である鼻血。
その対極的な要素が交差することで、制御と逸脱、外側と内側、静寂と騒めきの境界は曖昧になる。
 
——————-buggy
 
buggyの作品といえば、まず鼻血が浮かんでくる。
いい意味でも悪い意味でも、それはかなり印象的すぎる。
作家にとっては、自分のイメージがその一点で決定してしまうほどの強さがある。
セレブリティやアイコンを描いたポートレートに、突然現れる生々しい一滴。
それが作品全体の印象を一気に支配してしまう。
だけど彼は、そこから離れる道を選ばなかった。
むしろ、その方法論をどう使いこなすのか ——それが今回の個展の意味だと、僕は思っている。
鼻血という異物を、ただの記号やトレードマークとして繰り返すのではなく、
作品の中にどう配置し、どう効かせるか。
モチーフとの関係性や全体のトーンの中で、それを意識的に操作していく。
方法論として丁寧に落とし込んでいく姿勢に、作家としての成熟を感じる。
大衆的なイメージを借りて、そこにズレや違和感を仕込み、消費の構造自体を軽やかに批評する。
僕はそれを、ポップアートだと感じている。
 
---------------Curator 米原康正
 
◾️PROFILE
 

buggy
雑誌広告を中心に 2006 年より始動。
大阪、渋谷で展開するショップ「 ASOKO」のファサードやコンセプチュアルホテル「 Rock Star Hotel」の全ヴィジュアル、
Lady gagaSMAPの衣装へのペイントや国内外のグループ展や個展などでも活躍する。
その他、ブランドやメーカー とのコラボレーションでオリジナル商品なども多数リリースするなど、多岐に渡って 活動を続ける。