◾️STATEMENT
私たちは隣に立っている。
同じ空間を共有し、それぞれ異なる輪郭と視点を持ったまま。
イメージは与えられるものなのか、
それとも内側から立ち上がるものなのか。
消費される像、輪郭を持たず漂う存在、
そして内側から形を獲得する身体。
それらは混ざり合うことなく並びながら、
互いの在り方を静かに揺さぶる。
本展は、輪郭と消失のあいだに揺れる「イメージ」の境界を、
二つの視点から可視化する試みである。
 
ーーーーーーーFUSE Itabamoe
 
 
FUSEとは長い付き合いになる。
かつて彼が描いていたのは、眠たそうな目をした「ケムネコ」と呼ばれるキャラクターだった。
どこか世界から少し距離をとるような、曖昧でやわらかな存在だった。
しかしいま彼が描いているキャラクターは違う。
目ははっきりと開かれ、輪郭は強く、世界と正面から向き合っている。
その変化を、僕はまだ自分のキュレーションとして扱ったことがなかった。
一方で、 itabamoeの作品は以前から知っていた。だけど、キュレーションしたことはない。
そんな僕が、ある日 FUSEの家を訪ねたとき、二人が一緒に暮らし、同じ時間の中で制作していることを初めて知る。
そのとき、ひとつの疑問が生まれた。
FUSEの作風の変化は、彼自身の内部で起きたものなのか。
それとも itabamoeと出会い、時間を共有する中で生まれたものなのか。
そして同時に、もうひとつの疑問も生まれた。 itabamoeの表現もまた、 FUSEとの出会いによって変化しているのではないか。
二人は互いに影響を与え合っているのか。それとも、それぞれが別々に変化しながら、同じ場所へ向かっているのか。
この展示は、その答えを提示するためのものではない。むしろ、その問いを可視化するための展示である。
共に暮らす二人のアーティストが並ぶとき、そこに現れるのは単なる個人作品の集合ではない。
視線の共有。時間の共有。生活の共有。そしてイメージの共有。
二人が並ぶことで初めて見えてくる「変化の輪郭」を、この展示の中で確かめたいと思った。
この展示は、作品を見る展示であると同時に、ワイドショーのように野次馬気分で2人の関係を見る展示でもあるのだ。
 
———————Curator  米原康正
 
 
◾️PROFILE
 
FUSE
1985 年生まれ 東京を拠点に活動。
日本とアメリカのポップカルチャーを再構築し油彩という古典技法を合わせて現代の視点で描く。
雲のようなモチーフの輪郭は、キャラクター が持つ定まった形では無く、
流動的な模様と して、描く度に移りゆく形を表現している。
その模様は雲の様に抽象的でありながら、 キャラクターの持つ特徴として具象的なもの の形として構成されている。
このキャラクターは「 LOOKA」と呼ばれ、 心の目で見る というコンセプトのもと、
情報が溢れ続ける現代社会の中で揺るがない 真実を見つめようとする、
FUSE 自身の内面 から生まれた存在である。
FUSE にとって、空に浮かぶ雲は自由の象徴だ。
しかし視点を変えれば、それは地球を覆い隠す靄や煙のようにも見え、この世界の真実を曖昧にしてしまう存在にもなる。
自由と真実は表裏一体であり、どちらも明確に掴み取ることはできない。
自由とは抽象であり、世界の真実は常に曖昧なものだ。
そしてそれらは、揺るぎない 心の目 によってのみ捉えられるのではないだろうか。
その問いを、 FUSE は絵を通して自身へと投げかけている。
自由と真実の揺らめきの中で、心の目だけが捉えうる輪郭を追い続けている。
———————Curator  米原康正



 
itabamoe
東京を拠点に活動する。
文化服装学院を卒業したのち、アパレルデザイナーとして勤務。その後イラストレーターとして広告の世界へ転身し、 2021 年にアーティストとして活動を開始。
2010 年代の広告業界で女性像を表現してきたキャリアを通じて、イラストレーションを現代アートの主題として再構築して表現し、多様性が謳われる現代の女性の変遷する美しさをリアルタイムで捉えて表現する。
パッケージなどがある。
主な実績として G-SHOCK 国際女性デーメインビジュアル・ ロクシタン渋谷店 リニューアル記念ビジュアル・花王ロリエ 40 周年記念コラボレーションパッケージ・ WWD BEAUTY 表紙ビジュアル・渋谷ヒカリエ 9 周年ビジュアル・資生堂 MAQUillAGE プロモーション動画・ bareMinerals コラボレーションパッケージなどがある。