◾️STATEMENT
PICTOGRAPHS」は、日常的に使われる絵文字を題材に、シンプルな感情をピクセルで記号化したシリーズである。
この試みは、スマホ上で見ることを前提に制作された NFTコレクション「 KAWAII SKULL」から発展している。
画面の中で親しんできた小さなイメージを、キャンバスとして拡大しフィジカルに展開することで、それは単なる記号ではなく一つの作品として立ち現れる。
 
———————— KAWAII SKULL
 
KAWAII SKULL(カワイイ・スカル)は、もともと写真から表現をはじめ、やがてデジタルやピクセルアートの世界へと活動を広げてきたアーティストです。彼が扱うのは、 かわいい スカル という一見相反する二つのモチーフ。その組み合わせを通して、現代に生きる僕たちにとっての「生と死」「記憶と喪失」といったテーマを、視覚的に浮かび上がらせようとしています。
最初は花の写真やファッション撮影から作品をつくりはじめました。やがて祖父母の死を経験し、「人は死によって新たな力を得るのではないか」という考えにたどり着きます。そこから、死をきっかけに生まれる強さを表現する作品が動き出したのです。さらにコロナ禍では外出が制限されるなか、手元の写真を再編集して “PNG”シリーズを制作。身体を持たないデジタル作品の可能性に挑みました。
2021年には、 24×24ピクセルのドット絵で描かれたスカルをベースにした大規模なコレクティブル作品を発表。世界的なデジタルアートの流れとも呼応しながら、 KAWAII SKULLはデジタルアーティストとして大きな成功を手にします。
そして 2022年、僕は彼と出会いました。すでにデジタルで大きな成果を上げていた彼に、僕が提案したのは「フィジカルでの作品展示」でした。これをきっかけに、デジタル空間だけに存在していた作品が、物質を伴った一点ものとしても形を持ちはじめたのです。重要なのは、彼が NFTをやめたわけではないということ。むしろデジタルとフィジカルを両輪に、より広い表現領域を切り開いているのです。そして僕は、そのフィジカル作品を担うキュレーターとして彼と活動を共にしています。
僕が感じる KAWAII SKULLの魅力は、作品そのものだけではありません。作品の制作方法や考え方、そのプロセス全体がすでに批評であり観客を巻き込むプラットフォームになっています。彼のアートは完成品の評価にとどまらず、過程そのものが語られ応援される。作品だけではなく、方法論も含めて僕は彼の作り出すものにアートを感じるのです。
 
———————— Curator 米原康正
 
◾️PROFILE
KAWAII SKULL
学生時代に建築と写真を学び、デジタルへの依存やバグといった現象をピクセルを用いて表現し始める。
2021年に NFTコレクション『 Kawaii SKULL』( 10,000点)を制作。現在は、死のイメージや多様な価値観を象徴する存在としてスカルを描き続けている。